私達の研究室を,単純な「教官=教える人」「学生=学ぶ人」という図式で説明することはできません.それは,以下に紹介するように,取り扱っている内容の中に,「誰にもわからない内容」が含まれているからです.つまり,教官も学生も一緒に議論しながら考える,という場面がたくさんあります.

このページでは主に当研究室で学生・院生がどのようなことを学んでいるかをご紹介します。

地球環境の変化を学ぶために

将来の地球環境の望ましいあり方を知るためには,“危機的状況にある”といわれる現在の環境の様子が「いったいどの程度の危機にあるのか」を知らなければ対処できません.つまり,本来の自然のあり方からどの程度人間が悪さをしているのかを“測定”しなければならないわけですが,それには“人間が何も悪さをしなかったらどういう状態にあるはずか”がわからなければなりません.そのような状態は,過去の地球環境の歴史を振り返り,ヒトが環境にあまり負荷をかけていなかった時期からこれまでの変化を学ばねばなりません.そのために,過去の情報が蓄積されている唯一の“資料”である地層の見方を学ぶことが重要になります.このために,本研究室の学生は以下の活動に取り組んでいます.この部分は地学研究室と共同での取り組みとなっています.

  • 野外地質巡検
  • 岩石・鉱物鑑定実習
  • 化石鑑定実習
  • 野外調査方法実習

また,その他に,「こどもと環境教育」を考えるために、野外自然体験学習をテーマにした以下のような活動にも取り組んでいます.

  • こども自然体験キャンプ
  • ネイチャーゲーム体験

科学教育に環境教育を取り入れるために

科学教育において環境教育に取り組むべきだ,ということは誰でも考えつくことですが,それではどのような教育活動が,“科学教育としての環境教育”なのでしょうか.

環境はさまざまな事物や現象がからみあった複雑かつ巨大なシステムです.しかも,時間の経過とともにそのありようを変化させています.したがって,環境を理解するためには現在見られる科学現象だけではなく,過去に起こったさまざまな自然現象からも学ぶ必要があります.例えば,「無生物状態から生物は発生しない」というのは現代の常識ですが, 46億年という地球の歴史を振り返ると,誕生当時は無生物だった地球で生物が発生しているのです.したがって,地球環境が今後どのような推移をたどるのか,という“環境問題”を考えるにあたっても,地球史的時間・空間概念が必要です.環境教育を行うには,先ず環境とは何かを捉えなければならないので,本研究室ではこのような視点でゼミや野外実習に取り組んでいます.

平成13年度のゼミでは「気候変動論」をテキストにしました

岩見沢市周辺の最終氷期・最終間氷期の気候変動を研究した例.約13~7万年前が最終間氷期で7~1万年前が最終氷期.

所属学生が受講する講議・実験の内容

理科教育研究室の学生は,自ら教育の場で自然環境をテーマにした学習を組み立てられるようになることを目指して以下のことを学びます.それぞれの内容はシラバスで見ることができます(若干,シラバスと内容が違っていることもあります).

  • 自然科学の基礎理論
  • 地球環境の変化と現状
  • 自然体験学習の指導法

指定された講義や実習を履修することで,たくさんの資格(詳しくは「研究室紹介」を参照)をとることもできます(費用がかかりますので必ず資格を取得しなければならないわけではありません).

◎自然科学の基礎理論を学ぶために,理科の専門科目として以下のものを受講します.これらの科目により,高校までの理科の得意・不得意にかかわらず自然科学の基礎的な知識が身につきます(全理科所属学生の必修科目です).

  • 物理学概論(物理学を基礎から学びます)
  • 物理学実験(物理学関係の実験方法の基礎を体験し,物理的探究の仕方を学びます)
  • 化学概論(化学を基礎から学びます)
  • 化学実験(化学関係の実験方法の基礎を体験し,化学探究の仕方を学びます)
  • 生物学概論(生物学を基礎から学びます)
  • 生物学実験(化学関係の実験方法の基礎を体験し,化学探究の仕方を学びます)
  • 地学概論(地学を基礎から学びます)
  • 地学実験(化学関係の実験方法の基礎を体験し,化学探究の仕方を学びます)
  • 理科教材作成及び自然体験学習
  • 科学史・科学教育史

◎地球環境の変化と現状を学ぶために,理科教育研究室に所属する学生は以下の講議を履修します.

  • 古環境論
  • 地球環境変遷学(または宇宙惑星科学)
  • 地学実験・実習I(室内での実験の他に,地質見学旅行実習が含まれます)
  • 地学実験・実習II(室内での実験の他に,地質見学旅行実習が含まれます)

◎自然体験学習の指導法を身につけるために,理科教育研究室所属学生の専門科目として以下の講議等を履修します.

  • 理科総合実験・実習I
    →登山基礎理論・山岳気象・登山実習(秋)・冬の野外体験学習などを集中講議形式で体験します.
  • 理科総合実験・実習II
    →登山系行事のプログラム法・登山実習(春)・パッケージドプログラム基礎体験(ネイチャーゲームほか)
  • 理科総合演習I
    理科総合演習II
    →上記の二つは,2・3年生が合同でゼミを行っています.過去に扱ったテキストには「気候変動論」「地球システム科学」があります.

◎卒業論文作成のための研究が3年生後期~4年生後期にかけて行われます.理科教育研究室では,以下のキーワードに関係するテーマを学生自身が設定して研究します.

  • 自然科学
  • 科学教育
  • 環境とその変化
  • 自然体験学習

02年度は「新第三紀鮮新世~第四紀更新世の石狩低地帯の古環境とその教材化」,03年度は「厚岸湾の水質調査」,「更新世前期~中期の古環境と海水準変動」「柱状節理の形状の分布傾向とそのでき方」が研究されました.04年度は「定山渓地域の古環境」「岩石と鉱物に関するパッケージドプログラム」をテーマに研究が進められています。

◎研究室行事などで,以下の活動が行われています.

  • 夏休みこども自然体験キャンプ
  • 大学ネイチャーゲーム研究会事務局
  • 体験学習の集い(自由参加,パッケージドプログラムの体験)
  • 冬期自然体験巡検(自由参加,03年度は沖縄)
  • 池上杯,ET杯(スポーツ交流付きコンパ)

院生の学習内容

理科教育研究室の大学院生は,自然環境をテーマにした学習内容の確立を目指して以下のことを学びます.それぞれの内容は以下の通りです(内容は履修生と相談して変更することもあります).

  • 地球環境の変化と現状
    →主に学部学生と合同の巡検活動により、地球史上の環境変動がどのように記録・保存されているかを読み解きます.
  • 自然体験学習の指導法
    →各種のパッケージドプログラムの資格取得講習などに参加することで、体験学習指導のノウハウを学びます(取得できる資格など).費用がかかりますので必ず資格を取得しなければならないわけではありません.

◎理科教育専修のほかの院生とともに選択必修科目として以下の講義を受講します.

  • 理科教育学特論I
    →こどもに十分な自然体験活動を保証できる環境教育を実施するための探究活動・自然体験・パッケージドプログラムなどの研究と、その教育活動への応用について論ずる.おもに、体験活動の企画・立案に観察参加する中で、スキルを学ぶ。
  • 理科教育学特論II
    →こどもの教育における「環境・自然体験・科学的思考・総合学習」などをキーワードに、具体的な体験活動の場面をとらえ、科学教育の方法論がどのように成立するかを探る.主に、自然体験学習を具体的に指導する経験を通して考察する。

◎希望者は理科教育研究室所属学生の専門科目をスキルアップのために受講することができます.

  • 理科総合実験・実習I
    →登山基礎理論・山岳気象・登山実習(秋)・冬の野外体験学習などを集中講議形式で体験します.
  • 理科総合実験・実習II
    →登山系行事のプログラム法・登山実習(春)・パッケージドプログラム基礎体験(ネイチャーゲームほか)
  • 理科総合演習I
  • 理科総合演習II
    →上記の二つは,2・3年生が合同でゼミを行っています.過去に扱ったテキストには「気候変動論」「地球システム科学」があります.これには必ず参加してもらっています.

◎理科教育研究室では,以下のキーワードに関係するテーマを学生自身が設定して修士論文を作成します.

  • 自然科学
  • 科学教育
  • 環境とその変化
  • 自然体験学習

◎研究室行事などで,以下の活動が行われています.

  • 夏休みこども自然体験キャンプ
  • 大学ネイチャーゲーム研究会事務局
  • 体験学習の集い(自由参加,パッケージドプログラムの体験)
  • 冬期自然体験巡検(自由参加,03年度は沖縄)
  • 池上杯,ET杯(スポーツ交流付きコンパ)